もちまわり劇場「シンデレラ」完結編
王子→のびた シンデレラ→ジャイアン 従者→出木杉








王子はあの夜以来、
舞踏会以来、ずっと窓の外を頬杖をつきながら謎の姫
シンデレラのことを考えていました。


「はぁ〜…」


小さくため息をついては遠くを潤んだ目で見つめて
シンデレラのことばかり考えて…
それをずっと見ていた従者は
王子を可哀想に思い、


 大 変 不 本 意 な の で す が 


王子のために姫を探す方法を提案しました。


「王子、確かあの夜あの謎の姫君はガラスで出来た美しい靴を忘れていたはず…
国中の者にその靴を履かせ、ピッタリはけたものをこの城に連れてきてはいかがでしょうか?」


「え?…でも、でも、そんな人たくさんいるんじゃないかな?
僕、分からないかもしれないよ。」


「大丈夫です、あのような  大 き な 靴  を履く女性なんて
そんなにいるはずありません。」


そうです、シンデレラの落としていった靴はとても女性のものとは思えない大きさでした。


それはいい考えだ、と王子は早速国中におふれをだし
姫を探すための準備を始めました。








時は同じく、シンデレラも王子のことばかり考えていました。


「はぁ〜、あの夜の王子はとても、とてつもなく可愛かったぜ〜…」


し、シンデレラ…あなた今お姫さまなんだから…
…とにかく頭の中は王子のことで頭いっぱい胸いっぱいでした。




その数日後、シンデレラを探すおふれがでたのは
ちゃんと彼女の耳にも届いて…

「やったぜ、これであの王子と結婚して…
こんな貧乏生活ともおさらばってわけか。」

となんとも可愛らしくない…いえ、
可愛らしい微笑みを浮かべて喜んでいました。





やはり従者の予想通り、
あのような大きな靴を履けるものなど一人しかおらず
シンデレラの思惑通り王子と従者は
とうとうシンデレラの家の前まで来ました。


「失礼する、ここに娘はいらっしゃいますか?」

「は――っい、俺!俺がいるぜ!」


彼女は従者の言葉を聞き終わる前に手を上げ、
ドタドタと凄い勢いで出てきました。
その威圧感に少々怯みながらも
これが探している姫だったら嫌だな、と従者は思いました。


しかし、従者の期待は外れ
ガラスの靴は彼女にピッタリとあいました。



従者はガックリと肩を落とし
馬車に乗っている王子に報告しました。

「…王子、この家にあの夜の姫がおりました。」

「何?!本当か?!」

その顔は驚きでいっぱいになりました。


王子は身を整えることもせずに
彼女の元へ向かいました。

従者は眉間に皺を寄せながら
酷く痛む胸を押さえていました。







「君が、あの夜の…」

「はい」

シンデレラは可愛い王子の前で出来るだけ可愛い素振りをしてみせました。

これで玉の輿に…と勝利を確信した瞬間
王子は彼女の目の前から消えてしまいました。


いいえ、消えたのではありません
従者が王子の腕をとり、引っ張っていってしまったのです。







「ど、どうしたの?デキスギ…」

不安そうに王子は従者に聞きました。
もしかしたら、また自分は粗相をしてしまったのかもしれないと考えたのです。
それは、そうじゃなきゃこんな行動彼がするはずがないからでした。


「申し訳ありません。」

従者は王子を見ようともせず、ただ王子の手を先ほどより強くぎゅっと握り締めました。


「…っ…ふえ…」

その態度が従者が本気で怒っていると勘違いした王子は
不安になり、思わず泣いてしまいました。
彼の変化にすばやく気付いた従者ははっと我に返り、


「ああ、王子、申し訳御座いません。」


と握っていた手を離し、王子を抱き締めました。


「デキスギは怒ってないの?」

「とんでもございません!私はただあの姫に少々嫉妬してしまっただけで!」


嫉妬?と首を傾げる王子。
従者といえば、思わず口走ってしまった言葉に後悔しながら
でも嘘はつけずにハイ、と答えました。


「でもどうして、僕はシンデレラに靴を返しにきただけなのに…」


その言葉には従者も驚きました。
じゃああの数日間潤んでいた目はなんだったんでしょうか?
そう従者が聞くと王子はふふっと微笑んで


「?あんな綺麗な靴を失くしたら…あの姫が悲しんでるだろうな、って考えてただけだよ」


といいました。
肩の力が抜けた従者は、でも王子らしいな、と穏やかな気持ちを取り戻しました。

そうして二人は何事もなかったように
ですが、少し気持ちが変化した二人は
城へと帰っていきました。




余談ですが王子と結ばれなかった
たくましいシンデレラは
また違う舞踏会へもぐりこみ
今度は違う王子をゲットしたようですよ。





おしまい。