もちまわり劇場「シンデレラ」
王子→ジャイアン シンデレラ→出木杉 意地悪な姉→のびた






あまり乗り気でない舞踏会に二人ため息をついている男女がおりました。
一人はこの舞踏会の主役である王子。
もう結婚適齢期なはずなのに、理想の高い王子は相手がなかなか決まらず
頭を抱えた王が王子の為と勝手に舞踏会をひらいたものの
王子の理想の人は訪れず
退屈なパーティに嫌気がさしていました。



もう一人は青いロボットの魔女に
着せ替えカメラという機械を貸してもらって
自力できた美しく、かわいそうなシンデレラ
シンデレラがこの舞踏会に出た理由は決して玉の輿云々ではなく
一緒に暮らしている可愛くて可愛くて仕方のない姉が
狼のうようよいる舞踏会に行きたいと可愛らしいわがままを言ったので
心配になってしまったので仕方なく来た舞踏会。

横をちらりと見れば美味しそうに並んでいる料理に
零れ落ちそうなくらい大きな目をキラキラとさせている無防備な姉。
もう、それはもう心配で心配で心配で……
思わずため息が出てしまったのです。

「どうしたの?…美味しい料理食べにいかないの?」

ことん、と可愛らしく首をかしげ聞いてくる姉に勝てるはずもなく
優雅にエスコートしながら料理が並ぶテーブルに連れて行くシンデレラ。

そんな二人の姿は当然、目立ち…

「ん?あれはドコの姫たちだ?」



王子も当然二人の存在に気付きました。


















「おい、そこのお前達。」

乱暴な声と台詞で、美味しい料理を食べている二人を邪魔…もとい制止したのは
この舞踏会の主人公…王子でした。

シンデレラはその乱暴な言葉に眉を顰め
姉は途中でおあずけをくらったことに対して頬を膨らませました。


王子は二人を見比べ、思わず見惚れました。
シンデレラの気品があり跪きたくなる美しい姿に
そして姉の愛らしく思わず抱き締めたくなる程の姿に


「お前達…名前は?」

シンデレラは王子である相手にも怯まずに鋭い目線を相手にぶつけました。
自分だけでなく、ちゃっかり姉にも見惚れていたことに気付いていたシンデレラは
敵意剥き出しでした。


「私はノビタですけど…あの…何か…?」

二人の重々しい空気に耐えられなかったのか姉は
少し上目遣いで見上げ、びくびくしながら答えた。


その姿は元来から王子にあった少々Sなお心に
ズキューンっときまして…
まぁ、平たく言えば 恋 をしてしまったのです。



「…のびたか…」


―――ゴーンゴーン

王子がのびたに対して手を伸ばした時
ちょうど12時の鐘が城内に響き渡りました。

「あ、もうこんな時間…ふぁあぁ…」

12時になった瞬間、姉は小さく欠伸をして少しトロンとした目を
擦りました。
そうです、良い子の姉は12時になると決まって眠たくなってしまうのです。


「そうだね、じゃそろそろ帰ってねようか?」
「う…ん……」


そう頷いた姉はもう半分夢の世界のようです。
そんな姉を軽々と抱き上げたのはシンデレラ。


「それでは、失礼しますよ。オウジサマ?」

余裕綽々の笑顔を唇に浮かべ
シンデレラは姉を“お姫さま抱っこ”で城を後にしました。



え?ガラスの靴を落としていかないのかって?

それはもちろん…
このシンデレラはとても頭がいいのでそんなドジは踏んだりしません。

王子の切ない恋心は呆気なく散ってしまったのでした。


ちゃんちゃん