分かってるけど、分かりたくない。






恋敵








「のびたさん」

「え?」




夕暮れの商店街
一人でとぼとぼ歩いていたら
いきなり後ろから声を掛けられて…。

すこしビックリして振り返ると
そこには今一番観たくない相手が立っていた。




「しずかちゃん…」


「久しぶり」



小学校の卒業式以来にあった彼女は
たった数ヶ月しかあってないけど
なんだか大人びている気がする。
そして、相変わらず可愛い。


「しずかちゃんは、その、どうしてここに?」

「ちょっと参考書を買いにね。
のびたさんは?」

「僕は、マ…母さんの頼まれものを買いに…」


なんとなくママっていうのが恥ずかしくて言い直す。



それからなんとなく、公園でお喋りすることになって
僕たちはとりとめのない話をした。
それぞれの学校のこととか
友達のこととか。

二人で話すのは久しぶりのことで
たくさん話したいことがあって…

…出木杉のことがなければ
きっと、この時間も楽しいものだったと思う。

あんなに大好きだった笑顔も
今じゃまっすぐ見れなくて
なんとなく僕は俯いてしまった。




「―――…ちゃんと、してるの?」

「あ、え?…ごめん、何?」

「だから勉強。頑張ってる?
もうすぐ期末テストでしょ?のびたさんの学校も。」

「あ、う、うん。なんで知ってるの?」

「出木杉さんに聞いて…あ、彼と今一緒のゼミでね?」




僕は小さくああ、と頷いた。
そういえば、ゼミで会えるって出木杉が言ってたよな。

分かってるけど、分かるけど
僕の知らないところで二人が話してると思うと
なんだか、もやもやする。


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