「これ…」

顔を上げてノートを見ると
塾の時間中の小高さんとのやり取りのページだった。

しまった!―――

塾で全然勉強しないで、
しかも遊んでいたなんて出木杉にばれちゃうなんて。
呆れているだろう彼の顔を見れなくて再びうつむく。

言い訳を考えようとするけど
パニックになる余り、上手い事が言えなくなって…


「あ、あの…その…」


うー、自己嫌悪…。
なんでそのページ処分してなかったんだろ、僕。
それになにより、真剣に僕のために勉強を教えてくれようとする
出木杉に申し訳ないよ。


「ご、ごめ…」

「怒ってるわけじゃないよ。」


ふっと優しい声が聞こえたと思ったら
頭に心地いい重みが掛かってきた。
出木杉の手だって気づくと再び顔が赤くなる。

どこまでも優しい出木杉に思わず視界がゆがんだ。
あー、男の癖に、なんて泣き虫なんだろ…。
ポンポンと頭を優しく撫でる彼の手は慰めているつもりなんだろうけど
さらに僕の涙腺を緩めるだけで…。


―――あっ、それよりちゃんと謝らないと。
僕ははっと我に返って、顔を上げた。


「…ごめん。出木杉!」





見っとも無い、泣きそうな顔を出木杉には見せたくなんて
なかったけど…
でも、とりあえず謝らなきゃと思った。

思ったより彼との距離が近くてドキっとしたけど…。


「…僕、がん、ばるよ。勉強!
だから、ごめん!」

ともう一度謝った。



「あ、……あ、ああ。うん。」



あれ?
なんか、いつもの出木杉らしくない?
落ち着きがないっていうか…
でも気のせいだよ、な。

すぐにいつもの笑顔に戻ってるし。



「…それじゃ、勉強しよっか?」



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