触れる



「ねぇ、出木杉さん・・・のび太さんになにしたの?」

「イヤ?別に・・・なにもしてないよ?」
僕は思わずギクッとしたが
いつもどおりの笑顔で答えた。

のび太クンがよそよそしいのは
多分あの日からだと思う。






あの日の放課後宿題を忘れたのび太くんは放課後残らされていた。
でも勉強がとても苦手なのび太くんはいつのまにか寝ていたらしい。
僕はその日委員会の仕事があったので生徒会室に残っていた。
忘れものをしたので教室に取りに行ったのだ。

そこには無防備に眠っているのび太くんが


いた。


僕は彼が眠っている前の椅子に座る。
そして彼の顔を見た。

彼の寝息しか聞こえないこの教室は
まるで時間が止まったかのように穏やかだった。
夕日で赤く染まった教室が
まるで別世界にいるように思わせる。

本来ならのび太くんを起こすべきなのだろうか?

と考えているとふとのび太くんが目を覚ました。
「・・・?」
まだ半分夢の中のようでぼーっと僕を見ている。
しばらく僕らはただ、ただ見つめ合っていた。 











パンッ!!


のび太くんの顔がみるみる赤く染まる。
僕は頬の痛みから自分が叩かれた事を自覚する。
彼は目に涙をためて僕を睨んでいる。

「なっ!何するんだよ!」
そう叫んで彼は机の上の教科書とかばんを引っつかんで教室を飛び出した。


「僕は何をしたんだ?」

彼に何をしたんだ?

今触れたやわらかいものは何?
今のは・・・キス?
「・・・ごめんね。」
誰に言うでもなく、誰もいない教室で僕は呟いた。


多分・・・というか絶対それが原因。

その日から彼は僕と目をあわさない。
話しかけると答える。
けれど目だけは合わさない。
たまに偶然あうと
すぐ真っ赤になって俯く。



気付いたらいつも君ばかり見ている自分がいる。
















なんとなく出来杉さんはやってしまいました。
本人自覚ないのですよ。
のびちゃまは出木杉の事は嫌いじゃない。好きだけど苦手。
複雑骨折。