恋敵








ヤバイ。






先週塾で小テストみたいなのやったんだけど
全然分からなかった…。


あれから僕は一応塾には通うものの
小高さん(本人はさゆりんって呼んでっていうけどなんとなく)
と遊んでばっかりで講師の話なんてちっとも聞いてなかった。


そのせいで小テストはまったく分からず
ほぼ白紙の状態で提出した。




「野比…もう少し頑張らんと…」



テストが帰ってきたとき先生に言われた言葉。
僕はうつむきながらそのテスト用紙を握り締めた。
帰ってママになんて言い訳しよう…。
きっと怒るだろうな…。
家庭教師に…なんてことになったらどうしよう。



「のびたさん。」



授業が終わっても机に伏せっていた僕に
救いの手を差し伸べてくれたのはしずかちゃん



と出木杉だった。







「ねぇ、今の授業についてこれないんだったら
一緒に勉強しない?私も教え方上手いわけじゃないけど…
先生に聞くよりは気軽に聞けて良いと思うの。」

「僕も教えるから三人で勉強しよう。」





正直嬉しい言葉だった。
この気持ちが無ければ、喜んで頷いていたと思う。
けど…


黒いもやもやとした気持ちが心を占める。
出木杉は所詮僕に勉強を教えたいんじゃなくって
ただしずかちゃんと一緒にいたいだけなんじゃないの?とか
僕なんて本当はどうでもいいんじゃないの?とか


だから僕は静かに首を左右に振って
無理やり笑顔を作りながら
「いいよ…迷惑だと思うし…」と断ったんだけど


「大丈夫よ、教えることで私にとっても復習にもなるもの。
だから気にしないで。」


とやさしく言ってくれた。
二人ともやっぱり僕より賢いだけのことはある。
僕の間に合わせの言い訳なんて全く通じなかった。