素直な気持ち6










まだ、少し横になっていた方がいいよ、と言いながら
出木杉は僕がまた寝るように促した。

「もうすぐ、保健室の先生も戻ってくるから…安心して。」


そう言って、席を立つ。
教室に戻るらしい。
時計を見たらもうすぐ昼休みも終わる時間だった。





(ここを出たら、また出木杉は…
目を合わせず
声もかけず
話もしてくれなくなるのか?)


出木杉の後ろ姿を見ていたらそんなことを考えてしまった。
僕がいつまでたっても答えをださないから。
僕が…何も言わないから。






「…そんなの嫌だ。」




「え?」



思わず口に出してしまった。



「ま、…まだ、出木杉のこと…好きかどうかなんて分からない。
でも、出木杉が僕に優しくないのは嫌だ。
こ、声も…かけてくれないのも…、そうやって優しい目で僕をみてくれないのも…!」


一度口に出してしまった後は…
自分の意思とは関係なく
まるで留め金が取れてしまったかのように次々と自分の想いを口に出していく。

出木杉は僕が言い終わるまでじっと聞いていてくれた。
そして全てを口にしたあと、ふぅっとため息をついて。
困ったように、でも少し嬉しそうに笑った。



「君があんまりに苦しそうだったから離れた方がいいのかと思ったんだけど
思い違いだったみたいだね…。」














ごめんね、と小さく謝りながら


でももし君が僕のことを今以上に好きになったら、ちゃんと
好きって言ってね。

そう囁いた。



僕はただ顔を真っ赤にするばかりで。
でも心のどこかで、その恥ずかしくて仕方のない言葉を言う日は
近いんだろうな、なんて思って、いた。


END





ここまで読んでくださり誠に有難う御座います。
ここからはおまけストーリーへと続きます。