その手のぬくもりを。






ちらり、と彼女の方を見ると…とても複雑な顔をしていた。

当然だろう。
自分のほうが泣いているのにそれを無視して
元凶である僕のところに自分の好きな人は心配して駆け寄ってくれたのだから。





だんだん今の状況を理解したらしい彼女はまた可愛い顔を歪めて
一段と大きく
わっと泣き出した。
今度こそ出木杉が気づくように。




しかし、出木杉は僕のそばを離れようとしない。
そんな出木杉の態度に見るに見かねたらしい彼女の友達が
少し怒ったように言った。

「彼女は野比のせいで泣いてるのっ、出木杉君もこの子を慰めてあげてよ!」



クラス中がその一言で静まり返った。
一斉に出木杉の返答を待つかのように…。
当の本人はふぅとひとつため息をついて、
振り向きもせずに…






「君達は何故彼女が泣いているのか、何故のび太君が泣いているのか
知っているのかい?
―――…知らないよね?
なのに、野比君が一方的に悪いって思ったの?」




彼女の友達は目を伏せて「そ、それは…」と口ごもる。
無理もない。
彼女達はこんな出木杉をきっと見たことがないんだろう。
いつも優しく優等生な彼しかしらないのだから。







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